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技術者の目 江戸を切る
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会社員で作家・美浜の鳴海さん 3作目は「和算忠臣蔵」
サラリーマンのかたわら、時代小説の執筆に取り組む美浜町美浜緑苑2丁目の鳴海風(ふう)さん(48)が、3作目となる「和算忠臣蔵」(小学館刊)を発刊した。和算の解明などに情熱を傾ける若者が主人公の物語。自動車部品会社の技術者の目で、武士の世界に不思議な彩りを添えている。
鳴海さんは、刈谷市の「デンソー」で、30人近い部下を率いて生産現場の計画をつくっている。「責任も重くなり、手を抜いてはできない仕事」といい、執筆は土、日曜など休日が中心だ。
子どものころから小説が好きだった。特に山本周五郎、藤沢周平などの時代小説の人情ものの世界にあこがれてきた。長く、自身も創作して文壇に上がることを夢見ていた。それには独自性が不可欠と考えていて、図書館で「和算の歴史」という本が目に留まり、テーマとして「これだ」と直感したという。
和算は江戸時代、鎖国の中で発達した日本独自の数学。後に西洋より早く発見したり、解いたりした問題もあったことがわかっている。「エンジニアとしての自分の強みを生かせる」と考えた。
デビュー作となった「円周率を計算した男」が第16回歴史文学賞(92年)を受賞した。「和算忠臣蔵」は、江戸時代の高名な和算家、関孝和の生涯を描いた2作目の「算聖伝」に続く発刊だ。
よく知られた忠臣蔵のエピソードや史実を背景に、暦づくりを巡る朝廷と幕府の対立を探り、剣術と和算に情熱を燃やす若い主人公と恋人の運命を描いた。
本の表紙絵と扉の題字は画家杉本健吉さん(96)の作品。鳴海さんが、杉本さんの作品を展示する杉本美術館の近くに住んでいることから、杉本さんが快く引き受けてくれたという。「先生の画業を尊敬していた。長年の夢が実現しとてもうれしい」という。
「和算忠臣蔵」は四六判296ページ。定価(税込み)1785円。
(1/19近郊知多版、名古屋版)
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